がしゃがしゃ、とかぐちゅぐちゅ、とか色んな音が聞こえる ので、リボンズはその煩わしさに耳を塞ぎたくなる。何だって、セックスというものはこんなに様々な音が同時に、しかも止めどなく体中から溢れてくるのだろ う。ただ欲求を吐き出すと言うだけなのなら、何もこんなに痛くて気持ちの悪い思いをしなくて良いのではないだろうか。文明というのがいくら進化しても、結 局人間と言うのは動物の一部でしかないのだということをまざまざと見せつけられたような感じがしてとても嫌だ。溜息を吐いて、それでも身体が要求するのに 従って、リボンズは腰を振る。脳が、多分喜んで波打っているのに、彼の本当のところはいつもひどく冷たく遠くにある。ただどうしようもなく無力に凌辱され る子供を見て、倒錯的な思いを抱くのはいつだって彼ではなく、どこか表面にいる身体の一部だけなのだ。恐らく、彼の人間らしさ、とかが残っている部分。そ ういうのが、猿にも劣る虫のように、懸命になって動くのは傍から見たらなんて愚かなんだろうと彼は笑う。
「気持ちいいかい?」
 何を訊ねてもどうせ返事がないのを判っていて、リボンズは口を開く。そもそも、問いに大した意味はないのだ。自分ですらそんなことは知ったことではない ので。
 彼の身体の下敷きになっている体温は、ひどく熱くて同時に彼の心と同じように冷めていた。こういうのは好きだ、と彼は思う。きっと、この子供と自分は魂 のどこかが似ているのだと思うのだ。だからこそ、磁石のように引きあった。原子レベルで決められたことなのだ。
「綺麗だね」
 事実壊れもののそれを扱うように頬を撫でれば、子供は小さく呻いた。エクシア、エクシアと小さな唇で呟いてリボンズの耳を掠める。音が煩わしい、と彼は その口に拳を入れる。子供の喉は激しく痙攣した。
「君の神は燃えてしまったよ。僕が燃やした。目移りするからさ。君は、ずっと僕だけを神と思っていればいいのに」
 ふ、ふ、と息がリボンズの手を濡らした。さっきより、ずっと良い、と彼は機嫌よく笑ってそのまま子供に身体をぶつける。白たえの衣のような皮膚に、鮮烈 な、赤い痕が残る。それも、彼には随分と遠い出来事である。








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