「ホント、もう信じらんない!」
いらいらして床に叩き付けたハロが、何か喚いているけど無視。私だって傷ついてるの。だって、ひどいじゃない?私は一生懸命お仕事してるのに、刹那にキス してあげたのに、なんで殺されかけなきゃならないの?ガンダムじゃないってよく判らないよ。ヨハンにぃに訊いてもわかんないって言ってたし。だって私たち は選ばれたんだよ?腐った世の中に制裁を加えて、もう逆らえないようにするのがお仕事なの。みんなガンダムに平伏すの。武力を抑えるのは圧倒的な力で押さ えつけるのが一番でしょう?もしそれが他の誰かだったら信用ならないし、妖しいーって感じだけど私たちなら大丈夫でしょ?ラグナがいるわ。ヴェーダだって ある。なのに、もう、ばかばか!なんであんなことするのよ。
「ネーナ、大丈夫か?」
「知らないっ」
ミハにぃが心配して声をかけてきたけど、相手にしてあげる余裕なんてないよ。怒ってるんだから、私。折角この前までいい気分だったのに台無し!今まで呑気 に暮らしてて、明日は何しようかなー、一年後は何しようかなって自分が死ぬことなんて全っ然考えてないお馬鹿さんたちが、もしかしたらって一瞬でも死ぬこ と、殺されることを考えて怯えるのを想像するとホントにいい気味よね。新鮮な血の色って、きらきら光ってピンクに見えるの。瓦礫の中で、ピンクがきらきら して、ああ、死ぬんだって絶望してる顔とか見てるとゾクゾクする。私の指先一つで、その瓦礫の下の人間の運命も思考も左右できるんだよ。刹那はガンダムに 神さまを重ねているらしいけど、それちょっと判るよ。簡単だもの、世界を変えるなんて。判るまで殺せばいい、そうでしょ?軍人がみんな死んじゃったら軍人 になろうって人はいなくなるでしょ?後は裏で情報操作しちゃえば、世論なんて簡単に変えられる。そういう力が私たちにはあるでしょう?なのに、刹那はそれ を否定した。他のマイスターもそう。私たちを敵だって言うの。
「ね、ミハにぃ。キスしたら、好きよって言ってることになるよね?」
振り向くと、ミハにぃは何か元気がなかった。ちょっと意地悪だったかな。だから、キスする。ごめんね、好きよ。ミハにぃのこと好き。ミハにぃも私にキスし てくれる。ネーナって呼んでくれるもの。あげたものをもっといっぱいにして返してくれるもの。
「銃を向けるってことは死んじゃえってことよね?」
キスしてあげたときに、睨まれたのなんて初めてだった。好きよ、って言ったのに。
「ネーナ、刹那に嫌われちゃったのかな。ネーナは刹那のこと好きなのに」
嫌いだから、殺そうとするのかな。そうやって訊くと、ミハにぃは一瞬黙り込んでから、もう一回前髪を上げておでこにキスしてくれた。相変わらず私にはキャ ラメルなんかよりもずっと甘いのね。でも、今欲しいのは砂糖菓子でもアイスでもないの。あの、赤い眸よ。ネーナのこと嫌いって言うアレが、いつかネーナの ことじっと見て、ピンク色になるの。それが欲しいんだよ。
「俺は、ネーナが好きだぞ」
「うん」
判ってるよ。でも、せっかくガンダムに乗ってるんだもん。手に入んなさそうなもの、欲しいじゃない?だってにぃにぃずは私にキスしてくれても、抱いてくれ ないし。ネーナのものにはならない。こうやって抱きついても、ミハにぃはただ頭撫でてくれるだけだもん。私が、胸を押し付けても変わんない。女の子は妊娠 しちゃうから、にぃにぃずは私に何もしてくんない。もっと早くセックスのこと知ってればよかったなぁ。そしたら、妊娠なんて心配なかったのにね。これで刹 那のこともダメだったらへこむなぁ。毎月毎月痛い思いしてんのに全然報われないじゃない。血もどろどろしてて色も汚いし。ほんと、女の子って大変で、損!














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